あらすじ
夫の30歳の誕生日、手作りのケーキを抱えてホテルのスイートルームへ向かった。
しかし扉の向こうにいたのは、元カノを優しく抱き寄せる夫だった。
驚いて箱を落とした私を、夫はゴミでも見るような目で睨みつけ、大理石の床に力任せに突き飛ばした。
「財閥の体面を汚すな」
ショックで倒れ込んだ私を、お腹を痛めて産んだ一人息子は怯えたように見下した。
「ママなんて怖い、結衣おばさんがいい!」
さらに入院中の病室へ元カノと息子を連れてきた夫は、私の腕から点滴の針を乱暴に引き抜いた。
「退院したら、離婚届にサインしろ」
その後、何者かに誘拐され血まみれになった私がビデオ通話で助けを求めると、元カノは嘲笑い、息子は泣き叫んで通信を切った。
「ママなんて大嫌い!結衣ママ、助けて!」
命からがら逃げ出した先で偶然彼らに遭遇したが、夫は血だらけの私を冷酷に見下ろした。
「こんな薄汚い狂女を放置するとは、不愉快だ」
5年間、全てを捧げてきた夫と息子は、なぜここまで私を残酷に見捨てられるのか。
冷たい雨の降る裏路地へゴミのように放り出され、私の心の中で何かが完全に死んだ。
もう、誰の妻でも、誰の母親でもない。
私は顔の血を拭い、華道家家元「井上桜子」として静かに立ち上がった。
章一覧
全80章
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