あらすじ
市川誠との婚約は、血で交わされた契約だった。関東一円を牛耳る二大勢力を一つにするための。
彼は私の未来。私と並び、この世界に君臨するために選ばれた王。
誰もが、私たちの結びつきは運命だと言った。
でも、あいつが纏って帰ってきたのは、安っぽい香水の匂いと、他の女の嘘の味だった。
匂いの主は、天野沙良。市川家が引き取ったか弱い孤児。誠が妹のように守っていると誓った、あの女。
私は彼を追って、会員制クラブへ向かった。
影から見ていた。彼が彼女を腕に引き寄せ、飢えた、必死のキスを浴びせるのを。
私には決してくれなかった、あのキスを。
その瞬間、私の未来は粉々に砕け散った。
ようやく理解した。彼の部下たちが囁いていた噂の意味を。
私はただの政略的なトロフィーで、天野沙良こそが彼らの真の女王なのだと。
彼は私の帝国を欲しがった。でも、彼の心は彼女のものだった。
慰みものになんて、ならない。
誰かの二番手になるなんて、絶対に。
私はまっすぐ父の書斎へ歩いていくと、氷のように冷たい声で言い放った。
「婚約は、破棄します」
父が何か言おうとするのを遮り、私は最後の一撃を食らわせた。
「森咲組の同盟は、私が守ります。龍胆寺組の組長、龍胆寺正と結婚します」
父の手からウイスキーのグラスが滑り落ち、床で砕け散った。
龍胆寺正。それは、私たち森咲組の最大の宿敵だった。
章一覧
全24章
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