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ウェディングドレス店の外で、杉山心渉は裸足のまま、冷たくてざらざらした地面を踏みしめていた。

夜風が彼女の薄いペチコートの裾を巻き上げ、体から最後の一筋の温もりをも奪い去っていった。

彼女はタクシーを呼ぶこともなく、ただこうして歩き続けた。

賑やかな商店街から、静かな別荘地へと歩いていく。

一歩歩くごとに、足元の砕石が突き刺さり、はっきりとした痛みが伝わってくる――

だが、胸の痛みの万分の一にも及ばなかった。

ついに、彼女が五年間住んでいたあの屋敷の前にたどり着いた。

指紋認証が成功し、ドアが「ピッ」と音を立てて開いた。

中は真っ暗だった。

温かい明かりもなく、彼女の帰りを待つ人もいなかった。

彼女は明かりをつけ、玄関に立ち、かつて自分が「家」と呼んでいたこの場所を見回した。

どこを見ても、そこには内山篤優の気配が残っていた。

リビングには彼がよく座っていたソファ、ダイニングには彼女がわざわざ彼のために買ったコーヒーメーカー、書斎には並んで置かれた二つのデスク……

そして壁には、あの巨大なツーショット写真があった。

写真の中の彼女はとても眩しい笑顔を浮かべ、彼の肩に寄りかかり、その瞳は光に満ちていた。

しかし今、その光は消え失せてしまった。

心渉は歩み寄り、背伸びをして、力を込めて壁から写真立てを外した。

「ガシャン!」

写真立ては彼女によって容赦なく床に叩きつけられた。

ガラスが砕け散り、四方へ飛び散った。

彼女はうつむき、写真の真っ二つに割れた笑顔を、長い間見つめていた。

そして身をかがめ、床のガラスの破片を拾い上げ、写真をズタズタに切り裂いた。

鋭い縁が指先を切り裂き、鮮血が写真に滴り落ちて、篤優の顔を滲ませた。

彼女は痛みを感じていないかのようだった。

ただ黙って、自分の写った半分を、割れたガラスと血の跡からそっと抜き取った。

破り捨てる。

そしてゴミ箱に放り込んだ。

これらすべてを終えてから、彼女は背を向けて二階へ上がり、寝室へと入った。

心渉は自分の荷物を一つ一つ片付けていった。

過去を振り返りながら。

大学の頃から結婚を意識するまで、七年もの間、ずっと片思いのように愛してきた。七年もの間、全てを捧げてきた。

若く青臭い頃の甘い曖昧さ、生死の選択を迫られた時の見捨てない絆。

彼女は、彼らが白髪になるまでずっと一緒に歩んでいくのだと思っていた。

今となっては、ただの笑い話に過ぎない。

突然――

携帯電話の着信音が鋭く鳴り響いた。

心渉が電話に出ると、電話の向こうから親友の西川沙耶の泣き声混じりの叫びが聞こえてきた。

「心渉! 大変…… 内山家が、 内山家がおばさんを特別集中治療室から追い出したの! 薬も止められたわ! あいつら、 おばさんを生きたまま殺す気よ!」

キーン――

心渉の頭の中は真っ白になった。

携帯電話が手から滑り落ち、床に叩きつけられた。

彼女は数秒間呆然とした後、猛然と車のキーを掴み、ガレージへと駆け出した。

「お母さん……お母さん、待ってて……」

車は病院へ向かう道を疾走していた。

心渉のハンドルを握る手は激しく震え、手のひらは冷や汗でびっしょりだった。

内山篤優!

よくもそんなことを?!

あれは彼女が互いに頼り合って生きてきたお母さんなのに!

あの年、彼女が彼を救うために両手を完全に駄目にし、二度とメスを握れなくなった時。

目を赤くした彼が彼女を抱きしめ、何度も何度も約束したのだ。

「心渉、これからは君のお母さんは僕のお母さんだ。 僕が永遠に彼女の面倒を見るよ」

「怖がらないで、心渉。 僕がいる。お母さんに何があっても、絶対に助けるから。 内山家が持つ最高の医療力は、いつでも彼女のために用意してある」

「おばさんが目を覚ましたら、家に迎え入れよう。 最高の医療チームを雇って、毎日彼女に付き添わせるから」

「心渉、僕を信じて」

彼女はこれほど長年、全身全霊で信じてきたのに!

その代償が、彼女の目の前で他の女と親密にし、彼女の母親の命を盾に妥協を迫ることだったなんて!

ビーッ――!

耳を劈くようなクラクションの音が左後方から聞こえてきた。

心渉は猛烈にハンドルを切り、タイヤが地面と摩擦して甲高い悲鳴を上げた。

ドンッ!

車は激しく路肩のガードレールに激突した!

エアバッグが瞬時に弾け飛んだ!

それと同時に。

病院のベッドでは、心渉の母親の生命維持モニターが、まさに最後となる長く伸びた音を発していた。

ピーーーーー!

一方、その頃。

篤優は、泣き疲れた田村結月を別荘の客室に送り届けて休ませたばかりだった。

彼は書斎のフランス窓の前に立ち、ネクタイを緩め、苛立ちを感じながらも勝ちを確信していた。

執事がドアをノックして入り、低い声で報告した。 「坊ちゃん、病院の方ですが……ご指示通り、杉山さんのお母様の薬を止めました。 医者が言うには、薬の供給を止めて48時間を超えれば、人は……」

篤優は手を挙げて遮り、少しの波立ちもない口調で言った。 「分かった」

彼は振り返り、その顔にはすべてを掌握している冷酷さしかなかった。

「彼女は?戻ってきたか?」

「杉山さんは……まだ連絡がありません。 人を遣わして探させましょうか?」

「必要ない」

篤優の口角に、 確信に満ちた氷のように冷たい弧が浮かんだ。 「彼女がどこへ行けるというんだ? どうせあの役立たずの友人たちのところへ泣きつきに行ったに決まっている」

彼はデスクの前に歩み寄り、引き出しを開け、真新しい「婚前契約書」を取り出した。

そこには条項がびっしりと書き込まれていた。

「彼女がすべての電話をかけ尽くしても、一本の救命薬すら手に入れられなかった時……」 彼は契約書をそっと机の上に置いた。「彼女は思い知るだろう。この世界で彼女の母親を救えるのは、俺だけだと」

執事は頭を垂れた。 「では……もし杉山さんが薬を求めてきたら?」

篤優は少し間を置き、口角のその弧は残酷なほどにはっきりとしていた。

「彼女に伝えろ」

「母親を救いたければ、サインした契約書を持って……」

「結月に謝罪し、許しを乞えと!」

続きを読みますか?

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全82章

  1. 第1章第1章 結月が身ごもっているのは、俺の子だ
  2. 第2章第2章 母の危篤
  3. 第3章第3章 金田一陽太を探しに

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