あらすじ
夫は業界随一の交渉人。その名は「公正」の代名詞。
私と息子が拉致されたあの日。人質は三人、解放枠はたった一人。
女か、子供か。情理を尽くせば、彼が救うべきは我が子の一択。
だが、耳に届いたのは流暢なスペイン語だった。
「その白い服の女を放せ」
彼の「かつての恋人」は生還し、息子は銃声に散った。鮮血の海で。
「犯人が彼女を選んだんだ」。事後、彼は眉一つ動かさず嘯いた。
息子の遺骨を抱き、私は乾いた笑いを漏らす。
愚かな男。彼だけが知らない。かつて特殊部隊にいた私が、その言語を解することを。
その欺瞞、あまりに脆し。
携帯が震える。届いたのは、一本の暗号通信。
「ファルコン、帰還せよ」
章一覧
全26章
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