あらすじ
夫と息子は、病的なくらい私に執着していた。
その愛情を確かめる方法は、いつも決まって別の女、早乙女沙羅に過剰なほどの関心を注ぐこと。
私の嫉妬と苦悩こそが、彼らにとっての「愛されている証」だったのだ。
そして、あの交通事故が起きた。
数々の映画賞を受賞した劇伴音楽を生み出してきた私の手は、無残に砕かれた。
それなのに、夫の雅臣と息子の湊は、沙羅の些細な頭の怪我を優先させ、私のキャリアを奈落の底に突き落とした。
彼らは私を見ていた。涙を、怒りを、嫉妬を待っていた。
でも、私は何も見せなかった。
能面のような無表情を浮かべた、ただの石像だった。
私の沈黙は、彼らを不気味なほど動揺させた。
それでも残酷なゲームは続く。
沙羅の誕生日を盛大に祝い、私は部屋の隅でその光景を眺めていた。
あろうことか雅臣は、亡き母の形見である金のロケットペンダントを私の首から引きちぎり、沙羅に渡した。
そして沙羅は、それをわざと足元に落とし、ピンヒールで踏み潰したのだ。
これは愛じゃない。鳥籠だ。
私の痛みは彼らの娯楽で、私の犠牲は彼らのトロフィー。
冷たい病院のベッドに横たわり、手術を待つ間、私が何年も育んできた愛が死んでいくのを感じた。
愛は枯れ果てて灰になり、後には冷たく硬い何かだけが残った。
もう、終わり。
彼らを正すことなどしない。
この鳥籠から、逃げ出す。
そして、彼らを破滅させてやる。
章一覧
全18章
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