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チャプター 1 彼女を助けず、彼女を信じず (パート1)

「ドォンッ!」

「まずい、足場が崩れたぞ、早く人を助けろ!」

轟音と共に仮設の足場が崩れ落ち、舞台上のダブルヒロインと十数人のダンサーがなすすべもなく地面に叩きつけられる。 悲鳴と怒号が交錯し、現場は一瞬にして阿鼻叫喚の渦に呑まれた。

裕美の左足は、砕けた木板の間に深く挟まれ、びくともしない。 その時、誰かが絶叫した。 「どけ!ワイヤーが切れるぞ!」

悲鳴に顔を上げた裕美の目に、ぐらぐらと不吉に揺れるクリスタルのシャンデリアが飛び込んできた。 真上だ。

直撃すれば、即死は免れても重傷は避けられない。

裕美は顔から血の気を失い、必死に左足を引き抜こうと藻掻いた。 ささくれ立った木片が容赦なく肌を裂き、じわりと滲んだ血が玉となって転がり落ちる。

無理に引き抜けば、足の皮膚が半分抉り取られてしまうだろう。 万策尽きた無力感が全身を苛む。

助けを求めるように客席へ投げた視線の先に、見慣れた人影が猛スピードで駆けてくるのが見えた。

天野健吾だった。

一瞬、裕美の顔にぱっと喜色が咲く。 だが、助けを求める声が唇からこぼれるより早く、健吾は無情にも彼女の脇を通り過ぎた。 うつ伏せに倒れる莉奈のもとへ駆け寄り、その華奢な身体を長い腕で庇うように抱きしめた。

「大丈夫だ、俺が連れて行く」

「健吾さん!」

莉奈は泣きじゃくりながら健吾の首にしがみつき、小刻みに震えている。

健吾は優しく彼女をなだめると、横抱きにして足早に舞台を降りていった。 その間、一度として裕美に視線を向けることはなかった。

一番近くにいたのは、私なのに。

彼の婚約者は、私なのに。

照明のケーブルが断線し、ぶつりと音を立てて舞台が暗闇に沈んだ。

舞台の光が完全に消え失せるその刹那まで、裕美は健吾が振り返ることを信じて待ち続けた。 だが、その背中がこちらを向くことは、ついになかった。

生きる本能が、裕美を突き動かした。 唇を固く噛み締め、痛みに呻きながらも力任せに足を引き抜こうとした、その時。 バキッと耳元で木が砕け散る音が響く。

左足が解放された感覚と、力強い腕に身体を掴まれ、その場から引きずり出されたのは、ほぼ同時だった。

「ドォンッ!」

背後でクリスタルシャンデリアが床に叩きつけられ、破片が弾ける甲高い音が響き渡る。

彼女はとっさに腕で顔を庇おうとして、自分の前に誰かが立ちはだかっていることに気づいた。

非常灯が点き、惨状を映し出す。

だが、目の前には誰の姿もない。

裕美は混乱のままあたりを見回し、再び健吾に視線をやった。

先ほどシャンデリアが落下した瞬間、彼は身を翻し、腕の中の莉奈を庇っていた。

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読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全303章

  1. 第1章チャプター 1 彼女を助けず、彼女を信じず (パート1)
  2. 第2章チャプター 2 彼女を助けず、彼女を信じず (パート2)
  3. 第3章チャプター 3 この件は、これで終わりだ (パート1)

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