あらすじ
ベルリンが一年で最も冷え込んだあの冬、私は親友の兄に恋をした。玉のように穏やかで気品ある彼に。
彼は私の身を全うして守るため、一族を裏切ることさえ厭わなかった。かつて私を狙った仇が浴びせかけた硫酸を身代わりに受け、その背中には今も消えない傷痕が残っている。
私たちは互いに愛し合い、その幸せは永遠に続くものだと信じていた。
──私たちが結婚を目前に控えた、ある日のことだ。身重の令嬢が私の前に現れるまでは。
「あなたが例の女? 彼が親族すべてを敵に回してまで選んだっていう?」
その女は軽蔑したような笑みを浮かべ、妊娠検査の報告書を突きつけてきた。
「彼が言っていたわ。あなたのような路地裏上がりの女なんて、所詮は表舞台に出せる器じゃないって」
「あなたへの優しさなんて、ただのポーズに過ぎないのよ」
私はその言葉を聞くや否や、裏拳で彼女の頬を張り飛ばした。
女の悲鳴が響く中、彼が、なおも振り下ろそうとした私の手を強く掴んで止める。
私は泣き叫ぶこともなく、ただ静かに彼の瞳を見つめた。
「別れましょう」
「あなたは本当に、汚らわしい」
章一覧
全11章
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