あらすじ
結婚3周年の記念日。奴の助手席には、見知らぬ新しい女。
今回は、掴みかかることも、狂ったように問い詰めることもしない。
ただ背を向け帰宅。心血を注いだ祝宴の料理を、淡々とゴミ箱へ葬り去る。
「奥様、午後のすべてを捧げたお料理なのに……」家政婦が震える声で引き止める。
濡れた手を拭く。その響きに、もはや体温はない。
「冷めたわ。もう、いらない」
キャリアを捨ててまで嫁いだこの男。それも、もういらない。
用意していた離婚届。迷いはない。己の名を、一筆、一筆、刻みつける。
身辺を整理する。衣服、宝石。
そして、私自身の「誇り」。
奴は知らない。この5年間、賞賛を浴びたすべてのデザインが、私の手によるものだということを。
私の才能を食いつぶし、奴は業界の寵児として君臨してきた。
3年もの間、封印し続けた番号を叩く。
「先生。私、戻りました」
今日、この瞬間から。奪われたすべてを、奪還する。
章一覧
全9章
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