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ベッドの上では特に、積極的で実にそそられる。

桐生和臣と桐生英一郎はその言葉を額面通りに受け取ったが、如月詩織はさっと顔色を失った。

桐生彰人の遠慮のない視線に、詩織は思わず逃げ出したくなった。

だが、どうやって逃げられるというのか。 今ここで動揺を見せれば、桐生家の人間に何を疑われるか分からない。

詩織は無理に笑みを浮かべ、当たり障りのない言葉でやり過ごそうとした。だが、彰人はさらに言葉を続ける。「ただ、少しばかりひ弱だな。体力もないようだ」

詩織は足元から這い上がってくるような悪寒に襲われ、顔から一瞬で血の気が引いた。

(彰人は何をするつもりなの?!さっきのことを話す気? 口外しないと約束したはずなのに!)

駆け寄って彼の口を塞いでやりたかったが、今の詩織には顔を上げることさえできない。あの、からかうような視線とぶつかるのが怖かった。

和臣は眉をひそめた。「彰人さん、それは……どういう意味です?」

「言葉通りの意味だ」

彰人は唇の端を吊り上げた。「そこにぐったりともたれかかって、顔にも血の気がない。あれでひ弱じゃないとでも?」

そこで初めて、和臣は詩織の顔色が悪く、手が氷のように冷たいことに気づいた。

「詩織はさっき飲みすぎて気分が悪いんだ。まだ回復していないんだろう」

祖父の前では紳士的で優しい男を装い、和臣は言った。「そんなに辛いなら、先に送って行こうか? 明日は契約の件で湊上市へ行かなければならないんだろう?」

詩織はこわばったまま頷いた。「ええ」

英一郎も心配の言葉を二、三かけると、和臣に詩織を送っていくよう促した。

詩織はうつむいて部屋を出たが、背中に突き刺さるような視線を感じていた。

帰り道、和臣は打って変わって冷淡な態度で、一言も口を利かなかった。

以前の詩織なら彼の機嫌を取ろうとしただろうが、和臣の本心を知り、あんな出来事があった後では、もう相手にする気にもなれなかった。

自室に戻るなり、詩織はバスルームに駆け込んだ。

体には情事の痕である赤い痣や手形がくっきりと残っていた。今日のドレスが露出の少ないデザインだったからよかったものの、脱いでみればそのおぞましさに息を呑む。

乱れた意識の中、彰人が腰を掴み、肌に強く噛みつき、ほとんど全身に口づけたことを思い出し、詩織はぶるりと身震いした。

下着には血が滲み、触れるだけで焼けるように痛む。詩織はシャワーの湯を出し、肌ごと洗い流したい思いで体をこすった。

あの、ろくでなし……。

彼の愛人になど、なるものか。

だが今は、と詩織は体に残る痕を見つめ、拳を握りしめた。

スマートフォンを手に取ると、処女膜再生手術の予約を入れた。

会社は桐生グループからの出資を待ち、失った市場を取り戻そうとしている。

この婚約は、たとえ和臣に好かれていなくとも、続けなければならないのだ。

少し冷静さを取り戻した詩織は、ベッドに横になった。休む前にLINEを開くと、「知り合いかも?」の欄に見慣れないアカウントがあった。

真っ黒なアイコンに、「彰」というシンプルな一文字の名前。

……彰人?!

詩織の呼吸がわずかに荒くなった。

見なかったことにして、スマートフォンを放り出し、無理やり眠りについた。

翌朝、詩織は勤務先の病院にメッセージで欠勤を連絡すると、車で別の病院へと向かった。

ここ数年で急成長した私立病院で、費用は高いが評判は良く、何より患者のプライバシーが厳重に守られるという。

県や市の基幹病院をしのぐ勢いだとさえ言われている。

詩織はマスクで顔を隠して待合室に入り、うつむいて自分の番号が呼ばれるのを静かに待った。

しばらくして、通りがかった二人の若い看護師がひそひそと囁き交わすのが聞こえた。「あそこにいるパイロットの人、すごく格好良くない……?」

「うちの病院もすごくなったよね。今年は民間の航空会社の健康診断まで請け負うなんて。さっきの機長、診察で上を脱いだんだけど、腹筋がすごくてよだれ出そうだった!」

「しーっ、静かにして。出てきたわ!」

詩織は無意識に顔を上げた。ちょうど、長身の男たちが一団となって出てくるところだった。

中でも先頭を歩く男がひときわ目を引いた。誰もが同じ白いシャツに黒いスラックス姿なのに、彼の肩幅の広さと引き締まった腰、すらりと伸びた脚が際立っていた。

その精悍な顔を、見間違えるはずがなかった。

ーーどうして、彰人が……。

詩織は一瞬、頭の中が真っ白になった。

掌に爪が食い込むほど強く握りしめ、今すぐこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。

彰人との接点はこれまでほとんどなかった。だが、決断も行動も早く、容赦のない男だという話は、いくつも耳にしていた。

もし自分が処女膜再生手術を受けにこの病院へ来たと彰人に知られたら、どんな目に遭わされるか、想像するだけでも恐ろしい。

だが、よりによってその時、一人の看護師がカルテを手に早足で出てきた。「7番の患者さん、いらっしゃいますか?如月――」

その声に、彰人はぴたりと足を止め、眉をひそめて振り返った。

現在読めるのはここまでです。

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全80章

  1. 第1章チャプター 1 締めつけて
  2. 第2章チャプター 2 婚約者
  3. 第3章第3章 呼び出しで鉢合わせ

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