あらすじ
会社のソファで夫の帰りを待つ間、何気なく数秒の短い動画を開いた。
節くれだった男の左手を、か細い指先が絡め取る。そこには、えも言われぬ艶やかさが漂っていた。
動画に添えられた、少女の甘い独り言。
「仕事の話に耽る大人たちの影で、密かに手を伸ばしてみた。 仕事ではあんなに理性的で冷静な彼が、私の前では理性を失ってしまうなんて」
私は微笑んで、その動画に「いいね」を送った。
「ねえ、最近の若い子ってこういう『俺様社長』ものが好きみたい。あなたのような社長も、商談中にこっそり手を繋いだりするのかしら?」
夫は顔を上げることさえせず、淡々と「そんなものばかり見るな」と告げるのみだ。
冗談めかして聞いたものの、私の知る夫がそんな真似をするはずがないと確信していた。
結婚して5年。彼はいつも、接待の場では私を控室へ追いやってばかりだ。ドラマのような甘い展開など、一度もありはしない。
ふと、動画の中の手に目が留まる。そこにはパテック・フィリップの腕時計。
それは、結婚記念日に私が夫へ贈ったものと、寸分違わぬ逸品であった。
章一覧
全28章
/0/21819/coverbig.jpg)
/0/20744/coverbig.jpg)
/0/16871/coverbig.jpg)
/0/25834/coverbig.jpg)
/0/22922/coverbig.jpg)
/0/22138/coverbig.jpg)
/0/20084/coverbig.jpg)
/0/27106/coverbig.jpg)
/0/27105/coverbig.jpg)
/0/27221/coverbig.jpg)
/0/27166/coverbig.jpg)
/0/27154/coverbig.jpg)
/0/27104/coverbig.jpg)