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第3章 復讐の誓いと堕ちた一夜

ガレージのシャッターが閉まり、ポルシェの車内は完全な密室となった。静寂の中、百合子の荒い息遣いだけが響いている。

薬の熱に浮かされた百合子は、隣にいる男が自分を救ってくれたのだと朧げに認識していた。本能が冷たいものを求めていた。彼女は無意識に博康の腕にすがりつき、そのシャツの胸元に顔を埋める。肌に触れる冷たさが、たまらなく心地よかった。

博康は彼女を制止することなく、冷ややかに見つめている。その瞳には、好奇心と獲物を前にした獣のような征服欲が宿っていた。

「熱い……助けて……」

百合子の掠れた声が、博康の理性をわずかに鈍らせる。彼女は不意に顔を上げ、潤んだ瞳で博康を見つめた。そこにあるのは、薬の熱情だけではない。もっと激しく、強い光だった。

「お願い……私を抱いて」

そして、まるで自分自身に言い聞かせるように、はっきりとした声で誓った。

「これで、三尾英樹を後悔させてやる……!」

その言葉を聞いた瞬間、博康の唇から冷笑が消え、瞳に鋭い光が走った。

「本気か?」

百合子は狂おしくうなずいた。もはや彼女を突き動かしているのは、薬の力だけではなかった。魂の底から湧き上がる、英樹への復讐心だった。

博康はその覚悟を見届けると、口元に深い笑みを刻み、彼女の顎をつかんで引き寄せた。

「いいだろう。その願い、俺が叶えてやる」

次の瞬間、博康の唇が百合子の唇を激しく塞いだ。それは救済ではなく、完全な略奪のキスだった。百合子は拒絶するどころか、待っていたとばかりに彼の首へ腕を回し、貪るように応じる。

狭い車内で、ふたりの体温が急速に跳ね上がっていく。上質なスーツの生地が擦れる音、シルクのブラウスが引き裂かれる音、そして肌と肌が重なり合う生々しい音。

博康は巧みに主導権を握り、百合子をレザーシートに押し倒した。軋むシートの音が、重なる喘ぎ声に溶けていく。

百合子は、生まれて初めて味わう脳が痺れるほどの快感に声を上げた。英樹と過ごした五年間、決して越えることのなかった一線。それを、出会って数時間しか経っていない見知らぬ男にあっさりと捧げてしまう背徳感が、彼女の情欲をさらに煽り立てた。

窓の外には静かな夜が広がっているというのに、車内だけは嵐のような情事に包まれていた。

どれほどの時間が過ぎただろうか。快感の波の向こうへ、百合子の意識が遠のいていく。限界を悟った博康が、ようやく動きを止めた。その額には、うっすらと汗が光っている。

事後、百合子はぐったりと意識を手放していた。上気した頬には、乾いた涙の跡が白く残っている。

博康はしばらくの間、眠る彼女の顔を無言で見つめていた。その表情からは、何の感情も読み取れない。

やがて彼はジャケットを脱ぐと、乱れた服の上から百合子の体にそっと掛けた。そして壊れ物でも扱うかのように慎重に抱き上げ、車から降りる。

ガレージからヴィラへと続くドアを開け、豪華なリビングを抜けて寝室へ向かう。キングサイズのベッドに百合子を横たえると、額にかかった髪を指先で優しく払った。その寝顔を見つめる瞳には、先ほどの獰猛さとは違う、複雑な光が揺らめいていた。

寝室を出た博康は、バスルームへ向かい、冷たいシャワーを浴びた。鏡に映った自分の首筋に赤い痕がいくつも残っているのを見て、自嘲気味に口元を歪める。

濡れた髪をかき上げながらスマートフォンを手に取り、ある番号へ発信した。

『桐山、至急俺のヴィラまで来い。お前の出番だ』

受話器の向こうの相手が言葉を発する前に、一方的に通話を切る。長い夜は、まだ終わらない。

現在読めるのはここまでです。

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全70章

  1. 第1章第1章 身代金はゼロお前は好きにしろ
  2. 第2章第2章 漆黒のポルシェと血まみれの救世主
  3. 第3章第3章 復讐の誓いと堕ちた一夜

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