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チャプター 1 車椅子の隠し子との電撃婚

「俺は足が不自由だからな。お前を抱くことはできない」

初夜。広くて冷々とした主寝室で、車椅子に座った男は冷たく言い放った。

神崎結月はベッドの端に縮こまって座り、血の気の引いた唇を噛み締めた。

「構いません。私にはそういう欲求はありませんから」

九条朔夜はそれを聞いて、鼻で笑った。

彼は結月に背を向け、横顔だけを覗かせた。スッと通った鼻筋に、キリッとした目鼻立ち。だが、その口から出る言葉はひどく辛辣だった。「俺の言っている意味がわからないのか。金で買われた安っぽい妻なんて必要ない。出て行け」

結月は頬を火照らせ、赤く腫れた目にうっすらと涙を浮かべた。

嫁ぐ前から、この政略結婚が地獄の始まりだってことはわかりきっていた。

だが、これが彼女にとって唯一の生きる道だったのだ。

恋人は交通事故で記憶を失い、あろうことか従姉と恋に落ちてしまった。彼に記憶を取り戻させるため、結月は3年もの月日を費やした。自分の体で人体実験まですることを厭わず、そのせいで太って醜い容姿になってしまったというのに。結局、彼からは二人の仲を引き裂く泥棒猫扱いされ、ひどく憎まれる結果に終わった。

父親が伯父に謀られて命を落とし、母親はそのショックで病床に伏せてしまった。

だが数日前、その母親までもが奴らの手によって命を落とした。

もう、これ以上我慢する必要はない。

目の前にいる冷酷非情な九条家の隠し子。彼こそが、自分の結婚と引き換えに手に入れた「復讐の道具」なのだ。

結月はうつむき、込み上げてくる弱音を噛み殺して飲み込んだ。「私を追い出したところで、九条家はまた別の女を送り込んでくるだけです。誰を選んでも同じじゃありませんか?」

朔夜は口角をわずかに上げた。「そんなに家政婦になりたいのか?」

結月は淡々と答えた。「九条家からはすでに結納金をいただいています。商談が成立した以上、後戻りはできません」

薄暗い照明の下で、朔夜はわずかに目を細めた。

ふと、この女がどんな顔をしているのか見てみたくなり、彼は車椅子を動かして彼女の方へ向き直った。

結月はこれまで一度も朔夜の顔を見たことがなかった。

彼の容姿は悪鬼のように醜いと噂に聞いていた。そのため、彼が振り向いた瞬間、体が勝手に反応して両目をぎゅっと閉じてしまった。

(どうせ彼は目も見えないのだから、私が何をしているかなんて分かりはしない。)

朔夜は目の前にいるぽっちゃりとした女をじっと見つめた。顔は丸いが、目鼻立ちは整っている。肌は異常なほど白く――まるで大福の妖精みたいだった。

思っていたよりずっとマシな顔をしている。

これまでにも大勢の女を無理やり押し付けられてきたが、自ら擦り寄ってきて、しかも追い払おうとしても離れない女は結月が初めてだった。

朔夜の中に、ほんの少しだけ興味が湧いた。

「そこまで覚悟が決まっているなら、ベッドに横になれ」

彼の態度がこれほど急変するとは思わず、結月の体は瞬時にこわばった。「あ、あなたは……その、できないんじゃなかったんですか?」

朔夜は冷ややかな声で言った。「ベッドに入ったら、絶対にヤらなきゃいけないとでも?」

あまりにもストレートで露骨な言葉に、結月はひどく気まずくなった。

一体何をするつもりなのか問い詰める勇気はなかった。余計なことを言って命を落とすのはごめんだ。彼女は薄く目を開け、恐る恐るベッドに横たわった。

朔夜は彼女をチラリと見た。

正直なところ、死後3日経った死体でさえ、ここまでカチコチにはならないだろう。

結月は目を閉じたまま、車椅子の音がだんだんと近づいてくるのを聞いていた。

艶のある低い男の声が、静かに降ってきた。「ズボンを脱げ」

結月は息を呑んだ。「しないって……言ったじゃ……」

その先を口にするのが恥ずかしくて、彼女はブルッと身震いした。「その、アレ……ですか?」

朔夜はさらりと言ってのけた。「お前が処女かどうか確認する」

「……」

結月は慌てて目を見開き、彼に掴みかかろうとした。

だが、その顔を見た瞬間、心臓が止まりそうになった。噂では見るに堪えない醜悪な男だと聞いていたのに、目の前にいるのは息を呑むほど完璧な顔立ちをした男だったのだ。

彼女は驚きで顔をこわばらせた。

「すみません」 結月は慌てて身を起こした。「どうやら部屋を間違えたみたいです。あの、あなたは本当に九条朔夜さんですか?」

朔夜は問い返した。「なぜそんなことを聞く?」

「九条家の他のご令息かと思いましたから」

「マスクを被っているんだ」 朔夜は思いつきで脅かしてみせた。「子供の生皮を剥いで作った特注品だ」

「……」

結月は恐怖のあまり手の力を抜いてしまった。スカートの下に隠し持っていた武器が、パサッとベッドの上に落ちた。

朔夜がさりげなく視線を落とすと、そこに一挺の銃があった。

続きを読みますか?

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全95章

  1. 第1章チャプター 1 車椅子の隠し子との電撃婚
  2. 第2章チャプター 2 あんなに完璧な顔立ちなのに、盲目だなんて
  3. 第3章チャプター 3 満足か?

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