あらすじ
薬を盛られたあの夜、私はすべてを失った。
婚約者も、家族の信頼も、亡き母が遺してくれた未来さえも。
異母妹の莉央に嵌められ、見知らぬ男と一夜を共にした私を、家族は被害者ではなく「恥知らず」と罵った。
家に戻れば、婚約者の翔はすでに莉央のものになっていた。
しかも彼女のお腹には、彼の子がいるという。
母が私のために遺してくれた婚約を奪われたうえ、家族は会社の危機を救うため、私にさらなる地獄を用意していた。
相手は、鷹司財閥の当主。
六十近い独身の老人だと噂される男。
そして彼らは、心臓病の弟の治療費を盾に、私にその男のもとへ嫁げと命じた。
逃げ場など、どこにもなかった。
弟を守るため、私は心を殺して婚前契約書にサインした。
もう愛などいらない。
もう誰にも期待しない。
そう決めたはずだった。
けれど結婚式の夜、誰もいない別邸で私を待っていた「夫」を見た瞬間、私は息を呑んだ。
「どうして……あなたがここにいるの?」
そこに立っていたのは、噂の老人ではなかった。
あの夜、私に最悪の記憶を刻みつけた男。
そして、鷹司財閥の若き後継者――鷹司暁だった。
「逃げられると思うな。お前はもう、俺の妻だ」
裏切られた令嬢の逃げ場のない結婚が、ここから始まる。
章一覧
全60章
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