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第3章 真夜中、藤井達也に道端で置き去りにされて

達也はほっと息をついた。片山美月なら必ず承諾してくれると分かっていた。

彼女は孤児であり、唯一の拠り所は彼しかいないのだ。

彼はそう思うと、再び口を開いた。「美月、安心しろ。 俺たちの気持ちは変わらない。俺はもっとお前を大事にする」

美月は胸を痛め、かすかに震えた。

傷つけられた心がずっと変わらないなんて、どうしてそこまで確信できるのだろうか?

達也は念を押すように言った。「祖母は最近体調が良くないから、俺たちの偽装離婚のことは言えない。心配させないようにな」

美月は冷ややかな目を向け、皮肉交じりに言った。「結局、あなたは会社の株のために離婚しないだけでしょ?」

祖母はかつて、二人が離婚した場合は達也が持つ藤井グループの株を没収すると宣言していたのだ。

達也は顔をしかめ、きっぱりと言い放った。

「俺はお前と離婚する気なんて一度もない。俺と結花はただの友達として付き合っているだけだ。そうやってすぐに噛み付くのはやめろ」

美月は鼻の奥がツンと痛んだ。端正な顔立ちに、かつては気高く優雅な魅力を感じていた目の前の男。 彼はいつから、こんなにも見知らぬ、偽善的な人間になってしまったのだろうか。

沈黙の数秒間が、永遠のように長く感じられた。

美月は達也を押しのけ、冷ややかな表情で言った。「明日9時に区役所へ行って離婚手続きをするわ。結花だって、口約束だけじゃ信じないでしょ?」

達也は一瞬呆然とした。

だが、一理あると思い直した。

彼は宥めるように言った。「安心しろ。ただの偽装離婚だ。結花の病気が良くなったら、また復縁するから」

その白々しい態度を見て、美月は血の気を失い、胃の中が激しくかき回されるような不快感を覚えた。

それと同時に、激しい痛みが襲ってきた。

今日は仕事に追われ、丸一日何も口にしていなかった。長らく鳴りを潜めていた胃痛が、ここに来て本格的に再発したのだ。

彼女は胃を押さえてうずくまり、額からはとめどなく冷や汗が噴き出した。

そして唐突に、苦しげに一口、血を吐き出した。

鮮やかな赤い血が、目に痛いほど焼き付いた。

達也は慌てて美月を支えた。「また食事を抜いたのか?胃が痛むんだな?」

美月は力いっぱいに彼を突き放し、苦しい息の下から絞り出した。「……放っておいて」

彼の偽善に満ちた顔など、もう1秒たりとも見たくなかった。

だが達也は引き下がらず、強引に彼女を抱き上げた。「病院へ連れて行く」

彼の腕は力強く、胸板も厚い。美月はかつて、その胸に寄りかかって本を読むのが何よりも好きだった。彼の鼓動を聞いていると、不思議と心が安らいだのだ。

だが今の彼には、見知らぬ他人のような冷たさしか感じない。それでも胃の激痛のせいで抵抗する気力もなく、なすがままに車に乗せられた。

達也は猛スピードで車を飛ばし、病院へと向かった。

ハンドルを握りながら彼が言う。「美月、少し我慢しろ。もうすぐ病院だ」

その時、達也のスマホが鳴った。

達也は着信画面を一瞥するなり、迷いなく車を道端に停めた。

『結花、どうした? 焦らなくていい、ゆっくり話してくれ……』

星野結花の名前を聞いた瞬間、美月の胃が再び激しく波打ち、彼女は助手席に突っ伏して苦しげにえずいた。

達也は二、三言葉を交わして通話を切ると、美月に向かって言った。「結花が、お湯を沸かしていて火傷したらしい。お前は自分でタクシーを捕まえて病院に行ってくれ。俺は先に彼女の様子を見に行く」

美月は青ざめた顔で、信じられないというように尋ねた。「藤井達也、今は真夜中よ。本当に私をここに一人で置いていくつもり?」

「美月、少しは聞き分けてくれ。ここから病院まではすぐそこだ。いいな、タクシーで行ってくれ」

達也は手を伸ばして彼女のシートベルトを外し、さっさと降りるよう急かした。

美月が車から追い出されると、達也はすぐに車を発進させて走り去っていった。

遠ざかる車のテールランプを見つめながら、美月の心は完全に冷え切った。

彼女は胃を押さえ、スマホを取り出してタクシーを呼ぼうとした。

込み上げる切なさに、美月の目頭が熱くなった。

この3年という貴重な時間を、根っからのクズ野郎に捧げてしまった自分が、死ぬほど恨めしかった。

堪えきれず、涙がみるみるうちに目に溢れ、美月の視界を滲ませた。

その時、唐突に強烈なヘッドライトの光が、彼女の華奢な体を照らし出した。

振り返ると、一台の乗用車が彼女に向かって猛スピードで突っ込んでくるのが見えた!

現在読めるのはここまでです。

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全153章

  1. 第1章第1章 結婚三年、私はただの身代わりだった
  2. 第2章第2章 奪われたものは自らの手で取り戻す
  3. 第3章第3章 真夜中、藤井達也に道端で置き去りにされて

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