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6年後。東京国際空港。

一台の黒い高級車が空港から都心へと向かっている。後部座席では、息を呑むほど整った顔立ちの二人の男の子と、天使のように愛らしい女の子が、身を寄せ合ってすやすやと眠っていた。

運転席でハンドルを握っているのは、染谷莉世の親友、萩原芽穂である。

「莉世、どうして急に子どもたちを連れて帰国する気になったの?」

莉世は海外では年収数億円を稼ぐトップジュエリーデザイナー「Zora」として名を馳せている。その地位をあっさり捨てて帰国するなんて、あまりにも自由奔放だ。

莉世は窓枠に肘をつき、指先で髪の毛を弄りながら冷たく微笑んだ。

「ヴィーナス・ジュエリーが破格の報酬で私を引き抜きに来たのよ。私のものを奪い返すために、当然この波に乗って帰るべきでしょ」

ヴィーナス・ジュエリーは板倉家の産業であるだけでなく、莉世の亡き母が一生の心血を注いだ結晶でもある。

6年前、義妹の理乃の罠にはめられて家を追い出され、母が遺した会社までも奪われた。今回の帰国で、彼女は奪われた自分のすべてを必ず取り戻す覚悟だった。

芽穂は呆れたように舌打ちをした。

「ヴィーナスなんて、あの頃は資金難で倒産寸前だったのに、本田グループから巨額の出資を受けて息を吹き返したのよね。あの腹黒い猫かぶり女の理乃が、運良く本田の社長に見初められて玉の輿に乗ったおかげでさ」

芽穂は鼻で笑った。

「もし理乃が、あんたこそが国際的トップデザイナーのZoraだと知ったら、その場で血を吐いて倒れるんじゃない?」

本田ホールディングス代表取締役社長兼グループ総帥、本田正弘。東京の経済を牛耳る、若くして最も冷酷なビジネスの帝王。この街で彼の名を知らない者はいない。

莉世はわずかに眉をひそめた。理乃のためにヴィーナスへ巨額の融資をした上で、破格の報酬で私を引き抜きに来た男は、間違いなくこの本田正弘だろう。でなければ、理乃はおろか板倉家全体でも、あれほどの巨額の資金を用意できるはずがない。

車はヴィーナス・ジュエリー日本支社のビル正面に停車した。莉世は車を降り、そびえ立つビルを見上げた。母の心血は、今回必ずこの手で奪い返してみせる。

しかし、莉世が受付で入社書類を提示すると、冷たく入館を拒否された。理由は「国際的デザイナーZoraの身分を騙っている疑いがあるため」だという。

「どういう意味かしら?」

莉世が眉をひそめると、受付の女性社員は嘲笑するような目で彼女を上から下まで値踏みした。

「大名高いZora様は外国人なんですよ。あなた風情がその身分を騙って、誰を騙せると思っているんですか?恥をかかないうちに、さっさと消えてください」

莉世が反論しようとした矢先、受付の女性は突然態度を180度変え、恭しくお辞儀をした。

「島村総監、お疲れ様です」

莉世が振り返ると、島村理乃が目を丸くして、驚愕の表情で立っていた。

『染谷莉世が……帰国した!?』

理乃はすぐに動揺を隠し、傲慢な表情を作って莉世の前に歩み寄った。

「なんだ、お姉様じゃない。よくもまあ、いけしゃあしゃあとこの街に戻ってこられたわね?」

莉世は冷ややかに唇の端を吊り上げた。

「おめでとう、念願の総監の座に座れて。あなたの管理下で、ヴィーナスがある日突然倒産しないことを祈るわ」

「あなたね……!」

その時、受付の女性が理乃の耳元で何かを囁いた。理乃は一瞬呆に取られた後、わざとらしく甲高い笑い声を上げた。

「お姉様!私に会いたいなら直接そう言えばいいのに、どうしてZoraの身分なんて騙るのよ?」

その声は大きく、明らかにわざとだった。周囲の社員たちが足を止め、ひそひそと囁き合い始めた。

誰もZoraの素顔を見たことがない。だからこそ、皆がZoraを金髪碧眼の外国人だと信じ込んでいるのだ。

莉世は顔色一つ変えず、腕を組んだ。

「あら?私が自分の身分を証明する必要があるとでも?」

理乃は内心で冷笑した。莉世が帰国しただけでも目障りなのに、ヴィーナスに戻ってくるなんて。Zoraを騙るというなら、ここで徹底的にその化けの皮を剥がしてやる!

理乃は突然、莉世の手首を強く掴んだ。

「お姉様、ふざけるのはやめて!お姉様がお母様と同じようにジュエリーデザインを学んでいたのは知っているわ。でも、私は本物のZora様を知っているのよ!どうしてそんな嘘をつくの!」

理乃は内心得意げだった。自分が本物のZoraを知っているかどうかなんて関係ない。莉世のような負け犬がZoraであるはずがないのだから!

周囲からの軽蔑の視線を浴びながら、莉世の瞳は完全に冷え切った。この女は、自分の見栄のためなら息を吐くように嘘をつく。

莉世がその手を振り払おうとした瞬間。 理乃は自ら手を離し、悲鳴を上げて大理石の床に重々しく倒れ込んだ。

「何事だ」

低く、氷のように冷徹な声がエントランスに響き渡った。

莉世が声のした方へ視線を向けると、大勢の黒服のSPに囲まれながら、長身で引き締まった体躯の男が大股で歩いてくるのが見えた。

透き通るような白い肌に、非の打ち所がないほど深みのある完璧な顔立ち。特にその琥珀色の瞳は、底知れぬ深い淵を隠し持っているかのようだった。仕立てのいいダークトーンの高級スーツを纏い、ただそこに立っているだけで息が詰まるような圧倒的な威圧感を放っている。

莉世はわずかに目を奪われ、瞬時に全身が強張った。

『あの顔は……!』

その顔立ちは、家で待つ二人の愛息子とそっくりそのままだったのだ!

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読み進めると物語が続きます。

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  1. 第1章第1章
  2. 第2章第2章
  3. 第3章第3章

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