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第2章

Teruko POV:

心も体も, 鉛のように重い.

私の感情は, すでに限界を超えていた.

彼との関係が, 今, 完全に終わろうとしていることを, 体全体で感じていた.

私は凍える体を引きずって, 私たちの家へと向かった.

いや, 彼が「私たちの家」と呼んでいた, 私がデザインし, 私が費用を出し, 彼の名義で購入された, あの家だ.

玄関のドアを開けると, ハルが尻尾を振りながら駆け寄ってきた.

ゴールデンレトリバーのハルは, 私の顔を舐め, その体を私に擦り付けた.

彼の変わらない愛情に, 私の冷え切った心に温かいものが込み上げてきた.

私はハルを抱きしめ, 声を出して泣いた.

ハルの柔らかい毛の中に顔を埋めると, 一瞬だけ, 私の心を覆っていた暗い雲が晴れた気がした.

その時, 玄関のドアが乱暴に開かれた.

藤原だった.

彼はまだ怒りが収まらない様子で, 電話口に向かって怒鳴っていた.

「ここは僕の家だ! 誰を連れてこようと僕の自由だ! 」

彼はそう言い放ち, 私に気づかないまま, 部屋の明かりをつけた.

部屋の隅でハルを抱きしめていた私を見て, 彼の顔が硬直した.

「あら, お邪魔だったかしら? 」

私の声は皮肉に満ちていた.

藤原は電話を乱暴に切り, 私に向かって一歩近づいた.

だが, すぐに歩みを止め, 私を鋭く睨みつけた.

「まだいたのか, 輝子. そんなに僕から離れられないのか? 」

彼の言葉は, まるで鋭いナイフのように私の胸を突き刺した.

私は再び, 無言の涙を流した.

藤原は私に近づき, 手を伸ばそうとした.

「輝子, 落ち着け. 君の気持ちは分かる. だから, 何か必要なものがあれば, 言ってくれ」

彼の声には, 僅かながら優しさが混じっていたが, それは私をさらに深く傷つけた.

「僕が芽枝をここに呼ぶのは, 彼女が困っているからだ. 君には別の住まいを用意する. それから…」

彼はハルに目を向けた.

「芽枝は犬アレルギーなんだ. ハルは…どこか別の場所に預けてくれ」

私の心臓が, 冷たい氷に包まれた.

私の両親の唯一の形見であるハルを, 彼は何の躊躇もなく排除しようとしている.

彼の視線には, 私とハルに対する一切の愛情が感じられなかった.

彼の心の中には, 芽枝しかいない.

私は怒りに震え, 彼を突き飛ばした.

「ハルは私の家族よ! 私にとって, ハルはあなたよりも大切な存在なの! 」

私の声は, 初めて彼に向かって感情を剥き出しにした.

藤原は, まさか私が自分を突き飛ばすとは思わなかったのだろう.

彼は驚きと怒りで顔を歪めた.

「輝子, 何を言っているんだ! そんなに不貞腐れるな. 僕が誰を愛そうと, お前には関係ないだろう! 」

彼は一方的に怒鳴り散らした.

私はもはや, 彼と話す気力さえ失っていた.

私はハルを抱きかかえ, 寝室に駆け込んだ.

ドアを閉め, 鍵をかけた.

藤原は外からドアを叩き続け, 私を罵倒した.

「輝子! 開けろ! いつまでそんな子供みたいなことをしているんだ! 自立できない女は邪魔なんだよ! 」

彼の言葉が, ドアの向こうから容赦なく突き刺さる.

この家は, もう私にとって安らげる場所ではなかった.

私はハルを抱きしめ, 震える体を落ち着かせようとした.

外は台風のような暴風雨が吹き荒れている.

朝までには, この嵐が過ぎ去ってくれることを祈るしかなかった.

翌朝, 目が覚めると, 家の中は静まり返っていた.

藤原の罵声も, ドアを叩く音も聞こえない.

私は恐る恐る寝室のドアを開けた.

リビングには, 折りたたまれた一枚のメモが残されていた.

「荷物はまとめておいた. 出て行け. 輝子へ」

簡潔な彼の字だった.

私はそのメモを握りしめ, 音を立てて引き裂いた.

そして, ハルを連れて, この家を出た.

どこへ行く当てもなく, 雨の中を歩いた.

ハルは私の足元に寄り添い, 震えていた.

私たちは廃墟のような寂れた通りを彷徨い歩いた.

誰もいない場所.

だが, その孤独が, 一瞬だけ私を安心させた.

私はこの世界に一人ぼっちではない.

ハルがいる.

その時, 暗闇から二つの人影が飛び出してきた.

私はよける間もなく, 彼らとぶつかった.

耳には, まだ通話中の藤原の電話から, 女性の甲高い悲鳴が響いていた.

続きを読みますか?

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全12章

  1. 第1章第1章
  2. 第2章第2章
  3. 第3章第3章

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