あらすじ
娘のチーちゃんが息を引き取った午後3時14分。
私は冷たい病室で、心電図モニターの無慈悲な一直線を見つめていた。
震える手で夫に電話をかけると、電話口に出たのは愛人の新田凛だった。
「申し訳ありません、暁さんなら、今シャワーを浴びていますが……」
娘が「パパに会いたい」と泣きながら孤独に死んでいったというのに、夫は愛人と一緒にいた。
娘の高額な治療費を工面するため頭を下げた時も、彼は「凛を煩わせるな」と私を冷たく突き放したのだ。
私は絶望の中、彼が中身も見ずに苛立たしげにサインした書類を使って、たった一人で娘を火葬した。
燃え盛る火葬炉の炎を見つめながら、私は血の涙を流して彼を呪った。
私の5年間の我慢と犠牲は、一体何だったのか。
JAXAの天才エンジニアという夢まで捨てて彼に尽くしてきたのに、なぜ私の宝物はこんな理不尽な死を迎えなければならなかったのか!
激しい眩暈に襲われ、再び目を開けると、私は1年前の、愛人の息子の誕生日パーティー会場に立っていた。
ホールの隅には、色褪せた服を着た、生きているチーちゃんの姿があった。
私は迷わず娘を抱きしめ、夫の目の前で結婚指輪を外し、大理石の床に投げ捨てた。
「鷹司暁さん、離婚しましょう」
今度こそ、私は自分の手で全てを取り戻す。
章一覧
全150章
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