あらすじ
大晦日の夜。かつての愛の巣へ、18歳のモデルを連れて帰宅した男。胃癌末期の診断書を握りしめる彼女に向けられたのは、残酷な嘲笑だった。「こいつと結婚しなきゃ、お前とでもすると言うのか?」
捧げた時間は、丸十年に及ぶ。その献身の果てに突きつけられたのは、男の結婚。相手は、自分ではない。
抗うことも、縋ることも、もうしない。彼女は静かに病院へ電話をかけ、海外治療を承諾。音もなく、その姿を消した。
決別。それですべてが終わるはずだった。だが、彼女が消えた瞬間から、男の狂気が始まる。
自らの婚礼をかなぐり捨て、全職務を放棄。憑かれたように、世界中で彼女を追い求めた。
ようやく辿り着いたのは、一軒の病院。
看護師は怪訝そうに問う。「……ご家族ですか?」
男は必死に頷いた。「夫だ。彼女の夫だ!」
だが、看護師は首を振る。「ありえません。 彼女は、身寄りなどいないと言っていた。 それに――彼女は、もうここにはいないのです」
章一覧
全29章
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