あらすじ
会社の機密データを守るため火災現場に飛び込んだ私は、その代償として妊娠二ヶ月の子供を流産した。
激痛の中で目を覚まし夫に電話をかけると、出たのは彼の愛人だった。
夫は同じ病院の救急外来で、愛人の「指の擦り傷」を大げさに心配し、付きっきりで看病していたのだ。
「また何の騒ぎだ」
流産の事実を伝えようとする私を、夫は厄介者を見るような冷酷な声であしらった。
さらに絶望的なことに、私が命懸けで産んだ五歳の実の息子までが愛人に懐き、私を拒絶した。
愛人が食べさせたアイスのせいで息子がアレルギー発作で死にかけた時も、息子は愛人を庇って嘘をついた。
真相が暴かれてもなお、夫は愛人を抱き寄せ、私を睨みつけた。
「お前が厳しくしすぎるからだ。お前は母親失格だ」
命を懸けて尽くし、身を切られる思いで子供を失った私に与えられたのは、夫と息子の残酷な裏切りだった。
この五年間、私が耐え忍んできたものは一体何だったのか。
完全に心が死んだ私は、用意していた離婚協議書を彼の目の前で粉々に引き裂いた。
「鷹司夫人なんていう席、反吐が出るわ。くれてやる」
私は鷹司家を捨て、世界が渇望する天才エンジニアとしての真の姿で、全てを奪い返す決意をした。
章一覧
全120章
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