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第3章

「お腹? 何それ? まさか, 社長の子を身籠ったとでも言うつもりかしら? 」高田は冷笑した. その声は, 蛇のように私の耳にまとわりつく.

私の返事を待たずに, 高田は奪い取った弁当箱を乱暴に開けた. 中から, 私の愛情を込めて作った料理と, 湯気が立ち上る味噌汁の匂いが広がった.

「ふん, 安っぽい手作り弁当ね. こんなもので社長が喜ぶとでも? 馬鹿じゃないの? 」

高田はそう言うと, 持っていた弁当箱を逆さまにした. 熱い味噌汁が, 私の頭から容赦なく降り注いだ.

「きゃああああ! 」

熱い液体が頭皮を直撃し, 灼けるような痛みが走った. 髪の毛は味噌汁でびしょ濡れになり, 湯気が立ち上る. 脂と具材が私の顔や服にべったりと張り付いた. 味噌汁は床にまで飛び散り, どろどろとしたシミを作った.

頭皮の焼けるような痛みと, 脂でべたつく不快感. あまりの屈辱と衝撃に, 私は身動き一つ取れなかった. ただひたすらに, お腹を抱きしめることしかできなかった. この子だけは.

高田は満足そうに口角を上げた. そして, 弁当箱に残っていたもう一つの容器に目を向けた. それは, 遼佑が辛いものが好きだからと, 私が特別に作った麻婆豆腐だった.

「あら, まだ何か残っていたのね. 辛いもの好きの社長に媚びるつもりかしら? そんなもの, お似合いよ, あなたには! 」

高田は私の顎を掴み, 無理やり口を開かせた. 指で麻婆豆腐をすくい上げると, それを私の顔に, そして口の中に押し付けた.

「うぐっ, げほっ! 」

唐辛子の刺激が, 鼻と目を一瞬にして襲った. 鼻腔には焼けつくような痛みが走り, 目からは涙が噴き出した. 口の中は麻痺するほどヒリヒリして, 息ができない. 私は激しく咳き込み, 苦しさにのたうち回った.

「ふんっ! 」高田は嫌悪感に顔を歪め, 手をパンパンと叩いた. 「汚いったらありゃしない. せっかく綺麗にしたネイルが台無しだわ. 」

彼女は私を足元に見下ろし, 嘲笑った. 「そんな醜い姿で, まだ社長を射止められるとでも思っているの? あなたのような下品な女が, 社長の隣に立つ資格なんてないのよ! 」

「ち, 違う…」私はなんとか声を絞り出そうとしたが, 咳と辛さで言葉にならない. 喉はヒリヒリと痛み, 息をするのも苦しかった.

その時, コンコン, とドアがノックされた.

「総支配人, よろしいでしょうか? 」外から, 遼佑の女性秘書の一人の声が聞こえた.

一瞬, 私の心に希望の光が差した. 助けが来る. そう思った瞬間, 高田の声が私を覆い尽くした.