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―― 川端花純 ――

私は麻里栄さんに、大晴と離婚するつもりだと伝えた。彼女は一瞬驚いた顔をしたが、それ以上何も聞かなかった。ただ、私の目を見て、静かに頷いた。彼女の沈黙は、私への最大限の理解と尊重を示していた。

「事務所は大阪にしましょう。」

私の声は、驚くほど冷静だった。東京にいる意味は、もうない。彼から完全に離れる。

それから私は、インテリアデザインに関する専門書や雑誌を買い漁り、古い資料を引っ張り出しては読み耽った。寝る間も惜しんで勉強した。忘れていた知識が蘇り、新しいインスピレーションが湧いてくる。デザインに没頭する時間は、私にとって何よりも尊いものだった。過去の感情に囚われることなく、私はただひたすら、自分のキャリアを追求した。自分の能力を信じ、自分の道を歩む。それが、今の私にとって最も大切なことだった。

大晴が退院してから数日後、結婚記念日。大晴が久しぶりに家に帰ってきた。リビングのテーブルには、私が描き散らしたデザインの草稿が山になっていた。彼はそれを見て、不思議そうな顔をした。

「最近、何をしていたんだ?」

私は平静を装って答えた。

「インテリアデザイナーとして復帰しようと思って。最近はその準備で忙しいの。」

私の言葉を聞いて、大晴は一瞬、眉をひそめた。

「そうか……。忙しいなら、俺の世話まで手が回らないな。」

彼はそう言ったが、どこか違和感のある表情をしていた。彼はそれ以上何も言わなかった。

私は試すように尋ねた。

「もし私が離婚したいと言っても、大晴さんは応援してくれる?」

その時だった。大晴の携帯電話が鳴った。彼は書斎へ駆け込み、電話に出た。私の言葉は彼には届かなかった。

書斎から漏れ聞こえる声は、蓮音のものだった。私は心の中で苦笑した。やはり、彼は蓮音から離れられないのだ。私はそっと息を吐き、再びデザインの仕事に取りかかった。

大晴が書斎から出てきて、私を夕食に誘った。

「外に食べに行かないか?」

私は空腹だったので、彼の誘いを受け入れた。私たちは車でレストランへ向かった。大晴は私をレストランの近くで降ろし、駐車場を探しに行った。

先にレストランに入った私は、彼が戻ってくるのを待った。やがて、彼は花束とプレゼントを抱えて戻ってきた。彼は私に花束を差し出した。私にとって、彼から花をもらうのは初めてのことだった。複雑な気持ちだった。感動と、そして微かな違和感。

その瞬間、蓮音が私に向かって歩いてきた。彼女は私を見て、にこやかに微笑み、手を差し出した。

「お久しぶりです、川端さん。」

私は内心の動揺を抑え、彼女の手を握り返した。

大晴は蓮音にプレゼントと花束を渡した。

「蓮音、これは君へのプレゼントだ。」

彼はそう言って、私に渡したばかりの花束も蓮音に渡すよう促した。私は自分の手にある、一度は自分に贈られた花束を見つめた。私の心は苦しみに沈んだ。私は震える手で、その花束を蓮音に渡した。蓮音は満面の笑みを浮かべ、大晴に感謝の言葉を述べた。彼は花束の由来を軽く説明した。

その時、私は悟った。この日のすべての段取りは、蓮音のために用意されたものだったのだ。私は、彼らの再会のためだけに連れてこられた飾り物に過ぎなかった。私の心は、深く傷ついた。

そして、この痛みこそが、私の決断を後押しする最後の一押しとなる。だがその夜、私を待ち受けていたのは、さらに残酷な現実だった。

現在読めるのはここまでです。

読み進めると物語が続きます。

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  1. 第1章第1章
  2. 第2章第2章
  3. 第3章第3章

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