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チャプター 2 彼は誰?

アローラの視点

私は虚ろな目で顔を上げた。「おじさん、冗談はやめてください」

世界中どこを探したって、ノートン魔法学院なんて名前の学校は存在しない。たとえあったとしても、出願した覚えすらないのだ。

何より、この世界に魔法なんてものが本当にあるはずがない!

「冗談なんかじゃないってば」

郵便配達員は封筒を私の胸元に押しつけると、振り返りもせず車を発進させて去っていった。

手元の封筒に目を落とすと、そこには本当に『ノートン魔法学院』と書かれていた。

どんな素材の封筒なのか、雨粒が当たっても少しも濡れない。中央にはくすんだ金色の竜をかたどった封蝋が押されていた。精巧な作りで、中世の品のような趣がある。

一瞬ためらったあと、私は雨宿りのために近くのコンビニへ入り、ついでにその封を開けた。

「親愛なるアローラ様、 あなたはノートン魔法学院への入学を許可されました。本状の受領後、あなたの案内役であるコンスタンティンに連絡を取り、その指導のもとで入学に必要な物品を揃え、入学当日に同伴のうえ登校してください。連絡先:ランスロット・ビル最上階……」

ローズマリーの香りが漂う便箋を見つめながら、私はタチの悪いいたずらに違いないと思った。

ランスロット・ビルといえば、名門財閥であるランスロット家のグループ本社ビルだ。チャンスを掴もうと、どれほど多くの人間がそこへ入ろうと躍起になっていることか。

私のような人間は、きっとロビーにすら足を踏み入れられないだろう。ましてや最上階なんて、一族の当主しか立ち入れない場所だと言われているのに!

捨ててしまおうかと思ったものの、あまりにも作りが美しかったため、少し迷ってからバッグの中にしまった。

店員に呆れた顔で閉店を告げられるまでコンビニに居座り、店を出た頃にはすでに深夜になっていた。

家に戻り、狭い物置部屋のベッドに横たわった私は、コミュニティ・カレッジの合格通知を握りしめて一晩中泣き続け、明け方になってようやくうとうとと眠りに落ちた。

けれど眠りについて間もなく、物置のドアが乱暴に蹴り開けられた。

叔母は私を睨みつけ、居丈高に言った。「この怠け者が、さっさと起きて朝食の支度をしないか! 今日はオリアナとチャールズが入学準備の買い物に出かけるんだよ。2人の時間を邪魔したら、ただじゃおかないからね!」

私は重く痛む頭を抱えてベッドから起き上がり、生まれて初めてきっぱりと拒絶した。「嫌よ。私は試験を受け直す準備をするから、あの2人の朝食を作る時間も義務もないわ」

「あんた、頭でもおかしくなったのかい?!」

私が逆らうなど思ってもみなかったのだろう、叔母は目を剥いた。「身の程知らずが。どうやら大学の学費はいらないようだね?」

「自分でどうにかするわ。あのコミュニティ・カレッジにも行かない」

私は気力を振り絞って立ち上がった。「これからは、あなたたち家族とは一切関係ないから!」

そう言い放つと、引き出しから身分証とあの魔法学校の合格通知を取り出し、叔母を押しのけて部屋を出ようとした。

だが次の瞬間、オリアナとチャールズが私の行く手を阻んだ。

「このまま出ていくつもり、アローラ?うちが何年あなたを養ってやったと思っているの。養育費だってどれだけかかったかわからないわ。そのお金を返さない限り、ここから出ていけると思わないことね」

オリアナは勝ち誇ったように冷笑した。「忘れないで。あなたにかかった費用は全部、パパとママに返すって借用書にサインしたでしょう」

その傍らで、チャールズがうんざりした顔で私を見ていた。「アローラ、いい加減にしろよ。コミュニティ・カレッジの何が不満なんだ?」

「君みたいな孤児が、大学に通えるだけでもありがたいと思えよ。少しは分をわきまえて、ここに残って育ての親の世話をするんだな。将来、俺とオリアナが卒業して会社を立ち上げたら、清掃員の仕事くらいなら回してやってもいい」

あまりの厚顔無恥さに、怒りで全身が震えた。けれど養育費とやらを今すぐ返済することなど、今の私には到底できない!

私が窮地に陥ったのを見て取ると、叔母は乱暴に私の髪を掴み、玄関へと引きずり出した。「このあばずれが、お金を返せないなら今日から犬小屋で暮らしな!」

「ウッドに頼んでいい仕事を見つけてもらうよ。今日から男を喜ばせて稼ぐ方法を覚えるんだね。さっさと行きな!」

恐怖で震えがいっそう激しくなり、私は必死に叔母の手から逃れようともがいた。

叔母の言うウッドは歓楽街のポン引きだ。これまで何人もの少女を騙し、体を売らせてきた!

あんな人間に売り渡されたら、私の人生は完全に終わってしまう!

誰か助けて。泥沼の中でもがきながら生き延びるような惨めな身の上になんてなりたくない!

叔母に引きずられて玄関を出たその時、開いた扉の向こうで、私はたくましく温かい胸の中へと倒れ込んだ。

驚いて顔を上げると、澄み切った青い瞳とまっすぐに目が合った。

仕立ての良いスーツを着こなした長身の男性で、骨ばった大きな手が私の腰をしっかりと支えている。右耳につけた金色の竜のピアスが、陽の光を浴びてきらりと輝いていた。

現実離れしたその美貌は、同級生たちが騒いでいるどんなスターよりも魅力的だった。瞳は海よりも澄み渡り、彫りの深い顔立ちは芸術家が丹念に彫り上げた石膏像のようだ。

長いまつ毛が日差しを受けて目元に影を落としている。彼に見つめられた瞬間、心臓が一拍跳ねた気がした。

この人は誰……。

続きを読みますか?

読み進めると物語が続きます。

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章一覧

全39章

  1. 第1章チャプター 1 私の未来はこの最低な2人に壊された!
  2. 第2章チャプター 2 彼は誰?
  3. 第3章チャプター 3 魔法使いも車に乗るの?

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