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第3章

遠野詩織 POV:

「蓮さん?」 陸はうろたえ、瓜二つの兄を見て顔を青ざめさせた。 「どうしてここに?てっきり…」

「ここは俺の家だ」 蓮は彼を遮り、その冷たい目は私だけに注がれていた。 彼は双子の弟を一瞥すらしなかった。 まるで陸がただの家具であるかのように。

「彼女が香織を襲おうとした」 蓮は感情のこもらない声で断言した。

「私を襲ったのは彼女よ!」 私は言い返した。 こめかみを流れる血を指差しながら。 「彼女は狂ってる!謝罪させるべきよ」

頭の傷はずきずきと、深く焼けつくように痛んだ。 しかし、屈辱の方がもっと痛かった。 血を流しているのは私、暴行されたのは私なのに、彼はまるで私が悪者であるかのように私を見ていた。

私の怪我を見ても、彼の視線は平坦で、動揺ひとつなかった。

一方、香織は床に崩れ落ち、嗚咽で体を震わせていた。 「お兄様、怖かった」 彼女はか細い声で言い、盲目的に手を伸ばした。 「彼女の声が聞こえて、それで…お兄様が傷つけられると思ったの。ごめんなさい、ただあなたを守りたかっただけなの」

蓮の氷のような表情は、すぐに溶けていった。 彼は彼女のそばにひざまずき、まるで私の胃が締め付けられるような優しさで彼女を腕に抱き寄せた。 彼は優しく彼女を揺さぶり、安心させるように囁いた。

「大丈夫だ、香織。俺がここにいる。誰も君を傷つけさせない」

私は彼らを見ていた。 苦い笑いが喉の奥からこみ上げてくる。 何年も前、私が家の階段から滑り落ちた時のことを思い出した。 足首をひどく捻挫し、痛みは耐え難いものだった。 蓮はただ階段の上で無表情に立ち尽くし、もっと注意するようにと言ってから、執事を呼んで私を助けさせた。

彼の優しさ、彼の気遣い、彼の温もり…それは決して私のためのものではなかった。 それは彼女のためだけに取っておかれたものだった。

もう一秒たりとも見ていられなかった。 「帰るわ」 私は嫌悪感に満ちた声で言った。

背を向けて歩き出そうとしたが、蓮の声が私を冷たく引き止めた。 「どこへも行かせない」

彼は再び立ち上がり、その長身で出口を塞いでいた。 香織はまだ彼にしがみつき、彼の胸に顔を埋めている。

「お前は香織を押した」 彼は低い唸り声で言った。 「一条家の家法に従い、罰を受けてもらう」

「罰?」 私は信じられないという顔で彼を見つめた。 「怪我をしているのは私よ!罰せられるべきなのは彼女の方でしょう!」

香織は彼の腕の後ろから顔を覗かせた。 「お兄様、彼女を先祖代々の広間でひざまずかせて。鞭打ち二十回よ。彼女には自分の立場を思い知らせる必要があるわ」

全身の血が凍りついた。 「あなたにそんな権利はないわ」 私は吐き捨てた。 「私はあなたたちの家族じゃない」

「来月にはそうなる」 蓮は冷ややかに言った。 「それで十分だ」

役者である陸は、心配そうな表情を装って前に出た。 彼は私がいつも持ち歩いている、小さくて使い古された革表紙のスケッチブックを掲げた。 それは私の個人的な絵で満たされており、かつての芸術家であった私の最後の名残だった。

「詩織、謝るんだ」 彼は優しい声で促した。 「君はこのスケッチブックをどれだけ大切にしているか知っているだろう。一条会長は結婚祝いとして、この鞭を君に贈った。一家における権威の象徴として。もし罰を受け入れなければ、会長はこれを…破り捨ててしまうかもしれない」

その脅迫は、重く息苦しい空気となって漂った。 あの鞭は贈り物なんかじゃない。 支配の道具だ。 そしてスケッチブックは…私の最後の魂の欠片を宿していた。 蓮はそれを知っていた。 それが私にとって本当に自分のものと言える唯一のものだと知っていた。 彼は私に選択を迫った。 私の尊厳か、私の魂か。

私の肩は敗北感に打ちひしがれて落ちた。

彼らは私を先祖代々の広間へと引きずっていった。 そこは冷たく暗い部屋で、死んだ一条家の人々の肖像画で満たされ、その描かれた瞳が静かな裁きをもって私を見ていた。 彼らは私を硬い石の床にひざまずかせた。

鞭の最初の一撃が、空気を切り裂く悪意に満ちた音を立てて、私の背中に叩きつけられた。 鋭く、電気のような痛みが全身を駆け巡った。 まるで皮膚が引き裂かれるようだった。 私は悲鳴を上げまいと唇を強く噛みしめ、自分の血の味を感じた。

もう一撃。 そして、また一撃。 痛みは凄まじく、私を焼き尽くす灼熱の炎だった。 薄いドレスは全く保護にならなかった。 一撃一撃が残忍な力で振り下ろされ、布地と肉を引き裂いていく。

十回の鞭打ちの後、男は止まった。 蓮が前に進み出た。 その顔は読み取れない仮面のようだった。

「今、自分の過ちを認めるか?」 彼は石のように冷たい声で尋ねた。

私は頭を上げた。 体は震え、背中は苦痛のキャンバスと化していた。 私は彼の視線を、反抗心に燃える自分の瞳で受け止めた。

「私は何も悪いことはしていない」 私はかすれた声で言った。

彼の顎が引き締まった。 「続けろ」 彼は鞭を持つ男に命じた。

鞭打ちは再開され、以前よりもさらに獰猛になった。 痛みは耐え難かった。 階段から落ちた時の古傷が再発し、鞭の新たな苦痛に加わって、深く耐え難い痛みが走った。 もう耐えられなかった。

「お願い」 私は懇願した。 その言葉は喉から引き裂かれるように出た。 「やめて…お願い、やめて」

しかし、蓮は私を見ようともしなかった。 彼はすでに背を向け、まだ巧みに泣きじゃくる香織を優しく導き、広間から出て行こうとしていた。

「行こう、香織」 彼は柔らかく言った。 その声は、彼が命じたばかりの暴力とはあまりにも対照的だった。 「部屋に戻してやる」

彼はこの屋敷で私にプロポーズした。 片膝をつき、私を守り、慈しみ、世の中の盾になると誓った。 彼は私に一生の愛を約束した。

彼が私を床に血を流したまま置き去りにして去っていく中、彼の約束が私の心の中で、残酷で嘲笑的なコーラスのように響き渡った。

世界は痛みの渦に溶けていった。 意識を失う前に見た最後のものは、彼の去っていく背中、究極の裏切りのシルエットだった。

現在読めるのはここまでです。

読み進めると物語が続きます。

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  1. 第1章第1章
  2. 第2章第2章
  3. 第3章第3章

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