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愛しい彼は、私の子を「部品」と呼んだ
結婚三年。ようやく授かった、愛する夫との結晶。 だが正月の夜、あろうことか夫は、自らの手で堕胎手術を強行した。 充血した瞳で彼は告げる。「君の心臓では、出産の負荷に耐えられない」 罪悪感。脆弱な我が身への呪詛。彼の深情けを裏切ってしまったと、ただ己を責めた。 カーテン一枚の隔絶。流水音。彼が、手にこびりついた鮮血を洗い流している。 「先輩。実は奥様の体調なら、養生すれば無事に産めたはずです。 なぜ、あえて……」 「臍帯血だ」 氷点下の冷声。 「あの子の治療には、新生児の臍帯血による幹細胞移植が不可欠なんだ」 「妻の胎児が最良のドナーだ。だが十月十日も待てない。彼女の命が尽きる」 「だから──」 「薬剤で成長を強制し、五ヶ月で堕ろした。 赤ん坊は助からないが、血は使える」 「妻もどうせ長くない。その腹の子で本命の姉を救う。それが"私生児"である妻の、家への最後の貢献だ」 「妻には言うな。私が殺したとは悟らせるな。『死産だった』と告げろ」 絶望。閉ざされた瞼から、慟哭が止めどなく溢れ落ちる。 彼は我が子を殺しただけではない。骸の価値すら一滴残らず搾り取るつもりだ。 すべては臍帯血のため。私の、愛する姉を救うためだけに。
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